カラカラライフリズム
だが、晴喜はそんな樋口の思いとは裏腹に、
完成間近に迫った人形に、無残にも彫刻刀を突き立てたのだった。

初めて造った球体関節人形は、間接をおかしな方向に折り曲げて所々砕け、
「ぶちまけられている」といった表現がぴったりの様子で部屋の隅に放置されていた。

何があったんだ、と尋ねると、晴喜は樋口を睨み付けながら、


「失敗しただけ」


と答えた。

樋口はそんなはずはない、と思った。

何故なら、彼女の足元には今までに作った布人形が、
車に轢かれてぺしゃんこになった猫のようにいくつもころがっていた。



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