カラカラライフリズム
 


倉本は、男の名前を呼んだ。


「なに?」


「僕、昨日徹夜だったんさぁ……」


「そんなん知るか。


あちこちに訳の分からない部品散らかしやがって……。


こっちは部屋や物資を提供してるんだから、少しは俺のために働けよな」


「おお、手荒い……」
 

倉本は顔を洗う事にした。
 

今、彼が身を置いているのは、佐野という闇医者の暮らすマンションの一室だった。
 

倉本が佐野に拾われて、二ヶ月ほど経つ。


今ではすっかり肩の傷も癒え、執行所の追手からもうまく逃れられたようだ。


倉本は、洗面所に立って、ふと笑った。


鏡の中の自分は、以前の自分を知る人間にとっては、別人のようになってしまった。


自分でもまだ今の自分に慣れなくて、時々鏡に写った自分に警戒してしまう事さえある。



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