カラカラライフリズム
彼女は樋口と目が合うと、


「――来ないで!」


咄嗟に、倒れたままの一樹の喉元に、
ナイフを当てた。

一樹は無抵抗だった。
というより体に力が入らず、
目の前がくらくらしてさえいた。

自分の意思で動けない人質ほど、
都合のいいものはない……。

この状況で、主導権は幸枝にあった。

樋口も一樹が危険だと悟ると、
それ以上は動けなかった。

だが、

「お前……何の為にこんな事してるんだ」
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