君のキオク、僕のキオク
出口は神社の境内の前だった。人気は無い。

本気で気分が悪い。

「・・・・休もうか」

石段に腰を下ろした佐伯の横に座る。膝に額を付けて息をつく。

「大丈夫・・・・・?」

恐る恐る肩に手が触れる。

「気持ち悪い・・・・ちょっとヤバい・・・・かも」

佐伯の冷静な言葉が聞える。

「熱あるでしょ?」

そうかもしれない。一昨日の昼間に熱あったし。ぶり返したのか。まったく無理しちゃダメだよー、と佐伯が呟く。

「とりあえず帰ったほうが・・・」

オレは立ち上がった。佐伯が手を引いて歩き出す。ずっと黙ったまま、気遣うように。一つ一つの仕草が、すごい気を遣っているのがわかる。

青い鼻緒の下駄の音がカランカランと響く。ゆっくりと歩いていると、突然破裂音が響いた。

「花火・・・・綺麗だね」

立ち止まる。佐伯の頬が花火の光に照らされている。

ああ、女子なんだなと思った。






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