二人で一人〜永遠に
扉を開けた、おばちゃんの顔は笑顔から一瞬で凍りついた。

「…………」

声が出ない、おばちゃんは口元を押さえていた。

「…お久しぶりです」

俺は、おばちゃんに頭を下げた。

「…琉…汰どうして…」

「…少し外に出れますか…」




俺は、薔薇の匂いが凪がれる公園でおばちゃんを待っていた。

「…琉汰」

後ろから名前を呼ばれ振り向いた。

「…………」

ラベンダー色のセーターを着た、おばちゃんに俺は頭を下げた。

ベイブリッジを見渡せる椅子に座り、俺は口を開いた。

「…千冬…元気でよかった…」

「…空元気…部屋で一人の時は…泣いているかも…」


「…………」

「それより琉汰、アメリカに行ったって千冬が…」

おばちゃんは、俺の横顔を見た。

「…離れないよ…俺は千冬のすぐ傍で守るんだ…」


「琉汰…あなたもしかして…」

「…兄貴に頼んで嘘ついてもらった…」

「琉汰…」

「千冬は、俺の事を考えて別れを言った…だけど俺は、どんなかたちでも千冬の傍に居たい…」

おばちゃんは、静かにため息をついた。

「…同情しているなら、千冬の傍に居ることはやめなさい…」

< 65 / 94 >

この作品をシェア

pagetop