君が為に、届くことなかれ
「だったら、お前が作れば良かっただろう…!?
自分は何の手伝いもしないで、バクバクまんじゅうなんか食いやがって!!」
「ふーん、だってイチは、ゆーちゃんみたいに力持ちじゃないもーん」
ツン、とアゴを反らして可愛いげの無い態度を取ってみせれば、その様子が更に百合雅の情緒を煽った。
「お前…っ、人を何だと思ってるんだ…!?」
怒りも露に詰め寄ろうとした彼女の前で、スッとしゃがみ込む人影
その人物の悲しげな横顔と哀愁漂う雰囲気を目にし、百合雅は思わずハッと動きを止めた。
「……折角、今年最後の種だったのに…」
ひどく消沈した様子でそう呟く彼女に、百合雅もイチも返す言葉を失って沈黙する。
そして、互いにバツが悪そうに視線を一度ぶつけ合うと、絶望にうちひしがれる朱莉に励ましの言葉をかける。
「あ、朱莉…じゃあ、今度もまたココに新しい種を植えよう!次は、絶対壊されない頑丈な柵を作ってやるから!」
「そうだよ、朱莉!あ、ほら!これから、夏本番になるし…ひまわりの種でも植えようよ!?」