あなたが私にできる事



私たちは大きなツリーを眺めながらホールごとケーキを突いていた。




今回のケーキはチョコではなく大きなイチゴがたくさん乗ったショートケーキだった。




サンタとトナカイの砂糖菓子までついている。




「これさ、ツリー。ぶっちゃけ邪魔じゃない?」



「うん。邪魔。
神崎さん家はツリーとか飾らないの?」




「…うーん。小さい頃はあったんだけどね。
あの年さ、義父が死んだ年。クリスマスがちょうど四十九日だったんだよね。それ以来何もしなくなっちゃった。」




ツリーにはたくさんのオーナメントがついていた。



その一つ一つを山口くんが飾り付けたかと思うと、なんだか可愛くて笑える。




だけど彼は何も言わずうつむいていた。




「あっ…。ごめん。暗い話。」



「いや。俺の家もクリスマスなんてやったことないんだ。」




山口くんは淋しそうに微笑むとフォークを置いた。




眩しそうに目を細めてツリーのイルミネーションを見つめる。






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