神楽幻想奇話〜鵺の巻〜
「小僧、お前は自分に憑いてる妖の声を聞いた事があるまい?」


「う…くっ…声だと?」

透は身動きがとれないまま、うめくように呟いた。

「そうだ、小僧が使っている力は、あくまで表面だけの物だ。
ワシが知っている神楽一族の夫婦にも、小僧と似た力を使う者がいたが、こんなものではなかったぞ?」


月読は透の喉元から刃を外して立ち上がった。


「どうやら戦い方を教えるのは少し早いようだ。…ついてこい。」

そう言って刀を納めた月読は、森の方へと歩いていった。

透もヨロヨロと立ち上がると、二股の尻尾を揺らしながら歩いていく巫女の後をついていった。





森へと向かった二人を見て、彩音がのんびりとしたまま言った。

「お姉ちゃん相変わらず強いねぇ。しーちゃんも久しぶり会えてよかったね!」

「…そ、そうね。あは、ははは!」

どこか硬い表情で忍は笑った。
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