神楽幻想奇話〜鵺の巻〜
沙綺は屋敷の中にある客間に透を案内した。

屋敷は透が考えていたよりも遙かに大きく、一度沙綺とはぐれると迷子になりそうだった。


沙綺は部屋につくと、大体の屋敷の造りを透に説明した。

「…っとまぁ、屋敷の中は大体そんなもんだ。
んじゃ、ゆっくりする前に風呂にでも行こうぜ！
今日も暑かったし、ほら、あんたも地べたに倒れたりしただろ？さっぱりしようや！」

沙綺はそう言うと、透の返事すら聞かずに準備を始めた。
確かに透も湯船で疲れを落としたい気分だったので、丁度良かった。


風呂に向かう途中、透は沙綺に問い掛けた。

「なぁ、沙綺……おまえもここに住んでるのか？」

沙綺は透に振り向くことなく答えた。

「んーにゃ。いつもはマンションに一人暮らしさ…。
今日はもう遅いし、帰るのめんどいから泊まるだけ。」

透はそうか…と呟くと、少し考え事に耽った。

（それにしても、白蓮様も爺様の遺言については触れなかったが…。
やはりあの言葉には、何らかの意味があったんだろうか？）

そんな事を考えているうちに、二人は屋敷の風呂についた。
風呂もまるで温泉旅館のように広く、どう考えても民家の風呂ではない豪華な岩造りだった。
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