この空の彼方



結局、辰清はいのに頼み込み、外で遊ばせてもらえることになった。



「もう、いのは甘いんですから。」


「だって、可愛いんですもん。」


「あんまり甘やかしすぎないでくださいね?」



いのは苦笑いで頷いた。



本来、灯世も叱るべきなんだろうが、やはりまだ三歳だと許してしまう。



小さいときしか遊べないのだから、今のうちだけでも好きにさせてやりたい。



今、辰清はまた飽くことなく泥団子をつくっている。



と、びたん、と音がして、辰清が転んだ。



途端にわあわあと声を上げて泣き出す。



「あらあら。」


「辰清様!」



急いでいのが駆け寄る。



「わたくし、手当てしてきます。
…今日はもう中で遊ぶことにしましょう。」


「そうですね、お願いします。
私はもう少ししてから行きます。」



いのは頷いて、辰清を助け起こした。



「辰清、1人で立てますね?」



灯世の言葉に、いのは驚いたようだったが、辰清は頷いた。



「はい。」


「いい子。」



頭を撫でてやると、辰清は涙を拭いて歩き出した。



灯世は二人を見送り、縁側に座る。








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