この空の彼方
「こういうのは久し振りだな。」



ほとんど唇を重ねたまま、芦多が言う。



答えようと口を開いたが、芦多はそれを待たずに口付けた。



腰に手を回され、抱き上げられる。



「ッ?」



身体がふわりと浮く感じが怖い。



何をするのか。



頭の隅で考えもしたが、芦多に触れられていると頭が真っ白になった。



「おろすぞ。」



え?と思った瞬間、背中に柔らかい感触。 



身体がふごんだ。



頬に髪がかかる。



芦多がさりげなく払い、唇をつけた。



「心の準備は?」



くすり、と芦多が笑う。



「もう二十だから、いいか。」


「え…と。」



確かに初めてでもないが、緊張する。



普段は着物で隠されている部分に手が触れると、顔が火照った。



…なんだか、恥ずかしい。



「嫌だと言ってももう遅いがな。」



今まで以上に悪戯な笑顔を見せ、芦多が灯世の着物をはだけさせた時だった。



「芦多ぁ、言い忘れ…。」



スパンと小気味よく音を立てて障子が開いた。



















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