この空の彼方
班長は、政隆達が決めた。



あまりにも顔が似ていない者は除外されるが、主に実力、統率力を見て、政隆など主要な師匠が決めるのだ。



芦多は勿論、千歳、爪鷹、耶粗も班長に指名されている。



爪鷹はどこかと視線を巡らすと、後輩の相手をしていた。



目が合った爪鷹は頷いてみせた。



芦多もにっと笑ってみせる。



「っにしても、なんか相手の速度遅くないか?」


「情報が間違ってんじゃねーの?」



政隆が唸る。



「そうかもしれない。
なにせ相手はあの海澱だ。
用心するに越したことはないし、みんないつでも出陣出来るように備えるように。」



いつの間にか耳を澄ませていた他の型の青年達にも聞こえるように、芦多は声を張り上げた。




「その通りです。」



声が聞こえた方をみんなが一斉に振り返る。



「灯世!」



驚いた。



芦多は叫ぶように灯世の名前を呼んだ。



灯世が毅然と立っている。



わっと稽古場が沸いた。



女と縁のない年頃の男連中が考えていることが丸分かりな芦多は頭が真っ白だ。



「はいはい、落ち着こうね~。」



回廊に上がって灯世の手をとった青年にかかろうとした芦多を羽交い絞めにし、爪鷹が囁く。




「いつ来たんだこの野郎!」


「わぁ、珍しく毒舌ぅ。」



ピューと口笛を吹いた耶粗を、芦多が睨みつける。



「なんでそんな不機嫌?」



訊いた千歳に噛み付く。





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