この空の彼方
「こいつに邪魔された!」


「あ~、はいはい。」



どうどう、と千歳が眺める。



「確かにあれはお気の毒様だったね。
せっかくあそこまで我慢して我慢して漕ぎ着けたのにね。」



あの日…。



あの日、せっかくいい雰囲気だったのに、耶粗が入ってきてぶち壊しだった。



灯世はそれはもう可哀想なくらい真っ赤になって…。



回廊の上の灯世に視線を戻す。



そしてはっとする。



こんなことをしている場合じゃない。



芦多は油断していた爪鷹を振り切って、走ろうとした。



が、その前に爪鷹が叫んだ。



「灯世、何がその通りだって?」



困ったように青年の相手をしていた灯世ははっとこちらを向いた。



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