この空の彼方
「で、誰だ?」



高望みでも笑わなないぞ、と政隆は芦多を覗き込んだ。



「…どうせ高望みだから言わない。」


「言えよ。
ここまで焦らして言わないなんて。」



別に焦らしたつもりはないけど…。



「灯世。」


「は?
ひ…よ?」


「辰之助様に仕えている守護者の灯世。」



それはまた、と政隆は言葉を切った。



「高望みだろ?」


「というか、辰之助様が手放さんだろうな。」



ふぅむ、と顎をなで、政隆は言った。



「いっそ、このまま娶ってしまわれるのではなかろうか。」



娶る。



芦多の頭の中で言葉が反響した。



「しかし、他の貴族との諍いが起きるかもしれないぞ?」


「御国を護るためだといえば、誰も口出しは出来んさ。
子どもがまた能力者なら、向かうところ敵なしだしな。」


「身篭っている間は城の護りが手薄になるだろう?」


「八重様を呼び戻すなりなんなりするさ。」



まあ、そんなに深読みするな、と政隆は笑った。



考えさせたのはいったい誰だ。








< 68 / 460 >

この作品をシェア

pagetop