この空の彼方
「他の人間がお前を避難しても、わしだけはお前を信じる。
本当のお前を知っているからな。」



正隆の言葉が心にしみた。



「正隆。」


「なんだ?」


「俺、灯世に自分から名乗る。」


「そうしろ。」



お前は芦多だ。



力強く正隆の声が廊下に響く。



「お前は確かに辰之助様の型かもしれない。
でも、第二の辰之助である前に、芦多だ。」



芦多は、子どものようにこくんと頷いた。



「それに、お前は優秀なんだから、表彰の時なんかに皆の前で名を呼ばれるだろう。」



芦多はハッとなって正隆をみた。



「そうじゃないか。
今度の大会の出場者発表の時にも…。」


「上位になれば褒美ももらえる大きな大会だしな。
名前が叫ばれる。」



芦多はガックリと首を落とした。



まったく、自分は何をやっているのだ。



「ほれ、しゃきっとしろ。」


「あああぁ…。」



唸る芦多の手を、正隆は優しく引いた。















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