時の雫 白銀の瞳
『…この世界の名前はエルドラ。美琴がいた世界とは違う。簡単に言えば、パラレル・ワールドだ。ただし、この世界のどこかに地球も存在する。なんのきっかけで、こちらの世界と繋がりをもち始めたのかはわからないが、ここに生きる人間の中には、美琴のようにいきなり入り込み、そしてここに生きる決意をした人間が何人もいる。』


『ちょっと待って…私と同じようにって…。選ぶとどうなるの?』

ジャスミンの赤く燃える瞳が私に向けられ、何故か怖くなって体を離した。


『もう一つの生きてきた世界の自分は消滅する。』


いつの間にか日は沈みかけ、吹きつける風は冷たくなって体の熱を奪い去る。


…消滅?今までの私がいなくなるの?


『そんなっ!困るよ!だって…私には夫もいて……』


そこまで言って、私は言葉を詰まらせた。


誰か必要としてる?

あっちの世界の私って、何してたんだっけ…

いなくなって困るのって誰かいる?

夫だって…


嫌な考えばかりが頭の中をぐるぐると廻り、わけのわからない感情に不安と焦燥感だけが襲ってくる。

…泣けてきた。


確かに、まだ状況は飲み込めてない。

ただ…考えれば考える程、向こうの世界では必要とされてないって事だけが明確になってきてしまって。


『美琴。先程、どんなきっかけでかわからないがと言ったが…お前がこの世界にきたのは意味がある。』


『意味?』

何も思い当たらないけど…
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