神様のきまぐれ
 
「あー。すぐ行く。
メイクだろ?」

中から声がする。

「はい。お願いします。」

扉越しに声をかける。


「え・・・?

ヒナコ・・・?」


室内から、日向さんの
確かめる様な声がして、
志央に見てくる様
言われた事を告げた。


「ゴメン。
ドア、開けて。」

日向さんに言われて、
ドアを押し開け、
鉄扉面にもたれたつ。

入口のギタースタンドに
ベースが立っている。

「追加、持っていこうと
思ってね。」

革のブーツの紐を結びながら、
彼は言った。


「もう、メイクした?」


唐突に聞かれ、
短く肯定する。

「そう。じゃあ、
唇はダメだな。」

と、
楽器を担ぎながら
彼は言う。

「えっ?」

聞き直した私に、

ただ一言、

「頑張れよ。」


そういって、
私のこめかみに
キスをした。

「あ・・・はい。」

どうして?

冷たさの後の優しさに、
心臓が過剰反応してる。


「一本持ってくれる?」

不意に、
三本目のベースを渡されて、
ドキドキしたまま、
日向さんについて
舞台ソデにいく。


 


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