神様のきまぐれ
スタッフが、歌詞カードを
コピーして、持ってきてくれる。

パートわけの作業をして、
コーラスを重ねる。

「ソウルっぽくやりたいから、
ここんとこ、ベタで
しつこめに被せて。
クライマックスは、シャウト。」

いつものように、
一方的な指示がくる。

「はい。」

スタッフが、
ステージの上を走っている。

スピーカーから響く、
楽器のチェック。

私たちは客席のシートにかけて
打ち合わせしている。

スタッフのマイクがうるさくて
志央の声が拾えず、
思わず困った顔を
向けてしまった。

「聞こえない?」

彼はイタズラな瞳をして、
私の肩を抱き寄せる。

今は仕事中だし、
ドキドキなんて、しない。

日向さんの・・・時
・・・みたいに。

私は、近くに響く
志央の声に集中していて、
日向さんが、ちらっと
こちらの様子を見てた事にも、
気付かなかった。

「ヒナコ。」

「はい?」

呼ばれ、志央の目をみる。

「コウジさんと、
なんかあったの?」

「えっ?」

動揺しないように、
気をつける。


 
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