神様のきまぐれ
 

「また、キミか。」

後姿が
見えなくなった事を確認して、
彼は呆れた声色で言った。

「すいません。
本当にごめんなさい。
・・でも、私、
何のことか、わからなくて・・。」

彼は嘘だろ?と
いいたげな含みで、
見つめている。

「本当に知らないの?
ラジオとか聞かないの・・?」

「はい。
TVももってないし・・
ステレオがあるくらいで。」


涙を拭きながら言った
自分の台詞に、
相手は吹き出していた。


気さくな笑顔

こんな表情で笑うんだ・・・


「変わってるね。」


彼は言って、
聞き覚えのあるフレーズを
口ずさんだ。

「聞いたことある?」

「ええ。それなら。」

どこかで聞いてる。

「それを歌ってるのが、
志央って、ゆうんだよ。
23歳の子でね。」

「そうなんだ。

でも当分聞けないな。」

思わず、一人ごちった私を、
彼が不思議そうに見つめる。

「すいません
私、天然だってよくゆわれて
もうここにも来ませんから。
ご迷惑をおかけしました。」

深々と頭をさげた。


「キミ、金、無いの?」

彼は唐突に言った。

「はい・・?

今はとにかく。
近々には。」

その予定・・・と
いいかけた言葉を
飲み込む。

不思議そうな瞳。

全く伝わってないよね。
変な事聞くんだから



 
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