【短編】ギター少女とヘビースモーカー



夏休みが始まったけど、無情にも毎日補習

補習とか言いつつ、普段の授業と何も変わんない

授業なら授業で、ちゃんと単位に入れろっつーの


夏休みの補習は、1限国語、2限英語、3限数学で昼まで


渡辺先生の授業を受けてて、最近、この人は天才なんじゃなかろうかと思うことがしばしばある

そんな解き方思いつかねーよってことを、スラって言う


そんな先生をすげーなって思って、最近はちゃんと授業を聞いてる…気がする

「せんせー」

授業が終わったら、この人はすぐ教室から出ようとする

それを引き止めて、話しかけた


「162の(2)って…」

言いかけたときに、先生が変な顔をしてることに気づいた

はいはい、『キミが授業の質問してくるなんて』って、思ってんでしょーよ

私だって、教師に勉強のことを質問したのなんて中学以来だよ


でも、真面目に授業受けてたら、なんか気になるとこがあって…

せっかくの天才すぎる先生の言ってることが、違ってるような気がして、もったいなくて


絶対何か言いたそうなのに、口を開かず、他の生徒にするように普通に、笑顔で問題を覗き込んだ

また、ライン…  はぁ、イラつく。


「ここって、なんでルートの前にプラスマイナスつかないんですか?」

そのまま普通に質問した

先生は私のノートに目を移して、しばらく黙った

他の生徒たちが帰っていく音が聞こえる


「うーん…」と言いながら、手を丸めてあごにつけて、学者みたいなポーズをした

白ヒゲとか生えてそーなポーズ 似合わねー…


笑いそうになって先生からノートに視線を移すと、急にジーッと黙ってそれを見られてるのが嫌になった

字とか、汚いし

それに、数学の答案って、問題文から解答を作ってく思考回路が晒されてるみたいで…

なんか恥ずかしい…!!




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