咲いても、枯れても1~サクラ色~
『無視すんなよ』
気づくと彼はまた真顔になっていた。
『ご、ごめんなさい』
私、何謝ってんの?
思わず口がすべった。
すると彼はまた優しく笑った。
心臓が、うるさい。
『桜』
彼は小さくつぶやいた。
『え?』
思わず聞き返すと、彼は綺麗な指を私の髪に近づけた。
『髪についてたから』
そう言って私の髪に触れ、桜の花びらを取ってくれた。
───髪が熱い。
触れた、だけで。
『あ、ありがと…』
この気持ちは、なに?
『君の名前、さくら?』
彼は楽しそうに笑った。
私が「さくら」に見えたかしら?
『違う…成宮白純美。南高校一年生』
『白純美、か、白純美ちゃん』
───顔が熱くなる。
名前を呼ばれた、だけで。
『あなたの名前は?』
花は儚い。
桜は儚い。
いつかは散る、枯れる。
だからこそ、美しい。
『また、会えたら』
彼がそんな笑顔をしてたから、少し思った。
『またね、さくら』
彼は桜吹雪に包まれて、どんどん先に消えていった。
柔らかい笑顔を残して。
『白純美、よ?』
私は思わず一人で笑った。
あなたの方が、「桜」だよ?
私の心臓は、いつまでも激しく動いていた。