彼の隣りに寝る女
しばらくしたある夜、全然知らない若い男が私を指名してきた。

「はじめまして。僕のこと知らないでしょ?」

同じ大学の人だろうか?

私は頭の中をフル回転させたけど過去に出会った記憶がない。

「アミです。よろしくね。」

「・・・」

「今度デートしようよ?」

「始めて会った人といきなりデートは・・・」

「同伴ならいいでしょ?」

アミくんはすごく男前だった。

「ひなはさすがだな。イケメンの客に指名されるなんて。ノルマ達成に彼氏呼んだのかと思ったぞ。」

と店長が言っちゃうくらいだった。

だけどアミくんは、お店の外で会いたがった。

そしてキャバ嬢(とは言っても学生だけど)の私に本気で付き合いたいと何度もせまってきた。

アミくんがあまりにもしつこかったのと

お客様としてつなげておきたかったので

休みの日のデートに応じた。

私にとっては初めてのディズニーランド。

なのに・・・

よく覚えていない。

どのアトラクションに乗ったか、何を食べ、何を見て、お土産に何を買ったのか。

早く帰りたいという気持ちでいっぱいだったことだけは覚えている。

盛り上がらないのは

アミくんのことよく知らないから?

源氏名で呼ばれるとお客様を相手に営業している感で苦痛になる。

ディズニーランドは好きな人ときたら楽しいんだろうな・・・

そんなことばかり考えていた。

朝8時からランドにいて疲労もしていた。

「疲れた?パレード最後まで見ると、帰り車が混むからもう出ようか?」

気を使ってくれたのか、パレードの途中でランドを出た。

高速にのっても帰り道に1時間以上はかかってしまう。

私は疲れて助手席で寝てしまった。

高速を降りたところで起こされた。

「おなかすいた?何か食べる?」

疲れているので帰りたい、そう言おうと思ってアミくんの方を向いたとき

ちょうど赤信号で車が停止し、チュをされそうになってとっさによけた。

それでもアミくんは無理にホッペにチュをしてきた。

なんか嫌だった。

そして急に車はお店とは逆方向に走った。

変なとこに連れてかれたらどうしよう・・・

不安になった。
< 2 / 24 >

この作品をシェア

pagetop