ペアリングを外して



 一緒に駅まで行き、そこからは違う電車になる。

「じゃ、またね」

「おう」

 またね、という言葉に次があると期待が膨らんだ。

 手を振って改札を通っていった彼女の後姿を眺める。

 長い髪が揺れている。

 見えなくなるまで見届けて、俺も自分の乗る電車の改札へと向かった。

 ぎゅうぎゅうの電車に乗り込み、つり革に掴まる。

 新宿から何個目かの駅に止まったとき、ふと外の看板が目に入った。

 探偵事務所のものだった。

「浮気調査」

 俺に対する警告か?

 小さく嘲笑し、空いた目の前の席へと腰を下ろした。







 
< 40 / 109 >

この作品をシェア

pagetop