ペアリングを外して

 久美も笑顔を取り戻した。

 これでよかったんだ。

 何も心配することはない。

 俺たちは金曜日に会う約束をして、駅で別れた。



 翌日、昼休み。

 俺は三村に電話をした。

「湯本が俺たちのことに気付いてるぞ」

 そう報告すると、三村は驚いた様子を見せなかった。

「ああ、そうみたい」

「三村も何か言われた?」

「うーん。夏に集まった時、小出がいい匂いだったとか言ってたっけな」

 やっぱり、三村にも探りを入れていたか。

 もう何ヶ月も前のことになるが、その時に報告して欲しかった。

「何て答えたの?」

 三村は笑いながら答えた。

「いかがわしい店にでも行ったんじゃない? って」

 ……そうきたか。

「お前なぁ……」

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