パンダ戦争
――限定7つなんだ。朝行かないと売り切れちゃうみたい。


「いや、だからどういうことだよ」


――あら、あんた、ずいぶん生意気な口の利き方をするわね。


 電話の向こうでボキボキと、おそらくは指の骨を鳴らしているのであろう音が聞こえた。

理沙は高校時代、空手の全国大会で3連覇したほどに、か弱い女性だ。

ここはしかたない、理沙の顔を立ててやろう。


「すすすすいませんでした」


――よろしい。それじゃあ明日の朝7時、駅の近くにあるパン屋に集合で。


「なんでパン屋?」


――言ったでしょ? パンダパン買いに行くって。駅の近くのパン屋で売ってるらしいのよ。


「ああ、パンダってパンのことか。そんな話初めて聞いたけど」


――行くしかないわよね。パンダの肉を食べれる機会なんて、もうないかもしれないし。


「え、パンダパンってそういうこと? パンダの形をしてるとかじゃないんだ」


――それじゃあ、明日の朝7時。買えなくなったら大変だから、遅刻しないようにね。


 理沙は一方的にそう言い放ち、電話を切った。
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