六花伝
長は、あたしに二度と会うつもりはないようだった。
少しは、心が痛んでいるのだろうか。それとも、もう死にゆく者など気にかける必要もないと思っているのだろうか。
分からない。
帯で締められながら、ふっと気付いた。
ああ、まるで…
婚礼のようではないか、と。
口の端が思わずゆるんだ。
笑ってしまう。死出の旅にでる者が花嫁衣装など似合わない。
さあ、支度は済んだ。
我が花婿殿の下へ…
< 32 / 50 >

この作品をシェア

pagetop