甘い蜜
夢じゃない、ともう一度麻理亜の耳元で言ってやる。
もっと頼ってくれていいのに、何時も自分の中に抱え込む。
本音を言わないから麻理亜の心は限界だ。
「麻理亜……お前の望みはなんだ?」
「望み……?」
「欲しいもの」
欲しいものなんてないよ、と小さく麻理亜は答えた。
はぁ、と溜め息を一つ。
「俺にはそう見えないが」
麻理亜は求めている。
望みがあるのに、なぜ言わない?
言えばいい。そしたら叶えてやるから。
「敬夜さんの気のせいだよ」
力無く麻理亜は笑う。
俺も限界だった。