探偵バトラー ~英国紳士と執事~

その紳士、紳士につき

オレは途方に暮れたまま、ロシュツ卿と絵理を後部座席に乗せ、ハンドルを握った。

 一時的とはいえ、絵理の執事の任を離れたというのに彼女は随分と嬉しそうだ。うきうきとした様子で、ロシュツ卿と雑談を交わしている。こんなにも饒舌な絵理を見るのは初めてだった。

 ロシュツ卿は、絵理の父だけでなく、絵理にとっても親しい友人であるのだろう。御剣家の人間にとって、年の差などというものはほぼ考慮に入らない。

 人間性に共感出来るか出来ないか。利害を抜いた関係において、重視するのはそれだけだった。

 だから、別に絵理自身がロシュツ卿と親しくしてても、何ら疑問はないのだが。

 ちらちらとミラー越しに絵理の表情(かお)を見る度に、言葉で説明できない不満が蓄積されていく。

 言葉で説明できない故にこの感情を処理する事も出来ず、不満を持て余したまま車を走らせた。
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