†truth†

#02




[翔磨Side]


家では、ほとんどの時間を机に向かって過ごす。

数字など一つもなく、文字ばかりの数学の参考書たちと睨めっこしながら。


「翔磨、下りてきなさい」

夜遅く、父が帰宅する。

参考書を閉じ、部屋の灯りを消して父の待つ一階へと足を運ぶ。

「おかえり、父さん」

リビングのドアを開けるなり、父に笑顔を向ける。

「おぉ、勉強はどうだ」

父は、こちらを向かずに問いかける。

「…大丈夫だよ」

何が大丈夫なのかわからなかったけど、とりあえずそう言っておいた。



幼い頃から、俺は父に事件の話をしてもらって育った。

物心ついたときから、俺の脳は周りと比べて秀でていた。

父はそれを喜び、さらにたくさんの話を聞かせた。
時には、犯人は誰だと思う?なんてドラマみたいな質問も投げかけてきた。

俺は、幼いながらに必死に知恵を絞って答えた。

その考えは、決して的外れとも言えなかった。


俺は、父の話が好きだったし、父もまた、俺の成長を嬉しそうに見ていた。
その父の顔が、俺はすごく好きだった。

中学生になる頃には未解決の事件に間接的に関わらせてくれた。


じきに、俺は警察官ではなく探偵という職業に憧れを感じるようになった。

豊かな頭脳をふんだんに使い、賢い犯罪者たちの上をかく推理で人を助ける。



警察官なんかより、よっぽど人間らしいと思った。

そして、同時に俺に警察官は向いていないということも、薄々感じ始めていた。



「聞きたいことが、あるんだけど…」

「どうした?」

父は、食卓に向き箸を止めずに応答する。

「昨日教えてくれた事件について…」

そこまで言うと、父は手を止めた。


そして、こちらを向きにっこりと微笑んで言った。

「なんだ?お前が自分から聞くなんて珍しいな。…いつもは一人でどんどん解いていくのに。それほど、この犯人は優秀なんだな」



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