蒼い月

やっぱり『初雪』だから


そんなに降り積もるものじゃないけど


こうやって歩いていると


去年のことを思い出す。





〔寒い・・・〕

〔そりゃ冬は寒いもんだろ〕

〔手が赤くなってるよ・・・〕

〔ったく...しょうがねえなあ〕





そういって晴輝はあたしの手を握って


ポケットの中に入れてくれたんだっけ。     


照れながらもやってくれる、


そんな優しさがあたしの想いをますます


強めていったんだ。



ふいに横を向くと


いつもより景色は広くて。


自分の言った言葉を後悔する。


いつもよりも、帰る時間が何倍も長い、


そんな気がした。



ガチャ・・・



「ただいまー」

「あら、おかえり。
今日は初雪だったでしょう・・・?
寒くなかったー?」



そう言いながらも1人でこたつでぬくぬく。


あのー、お母さん?


心配してる様子が全くもって


伝わらないんですけど?
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