スケベの季節(仮)


「…………い、いかんいかん!」


頭をブンブンと左右に振り回し、ピンク色の思考を追い払った桐野。


(仮にも教職にある人間が、昼日中からこのような事を思い浮かべるなど…………!)


彼は己の不甲斐なさを恥じ、先ほどの不純な思考の残滓を飲み干すかのように、残りのりんごジュースを一気にあおった。




「え〜〜っっ!そうなのぉ?!

マヤったら、とうとう入れちゃったんだ〜〜〜!!」




唐突に中庭に響いた女子高生の声に、彼はリアクション芸人顔負けの見事さで口の中のモノを噴き出した。


(……………な、ななな、何だ今のわっっっ?!)


声の主は苦もなく見つかった。


中庭をはさんで、彼の反対側のベンチに人影が2つあった。


都築郁子(つづきいくこ)と笹木麻耶(ささきまや)。共に彼が受け持つクラスの女子生徒である。


「そ〜なのよ〜!今まではァ、『このままでいっかな〜』、って思ってたんだけど〜、何か周りのみんないつの間にかほとんど入れちゃってたし〜、私だけこのままじゃダメかな、って思って〜。」


(…お、お前ら!真っ昼間っから一体ナニの話を……!)


いつの間にか木陰に身を隠して2人の様子を窺う桐野。


……しかし、何故身を隠さなければならなかったのかは彼自身にも分からない。


「けど、最初って怖くなかった?」


「そりゃ怖いわよ!あんなのが目の前に迫ってきたら誰だって怖いって!」


(こ、声が大きい!誰かに聞かれたらど〜すんだっっ!)


と思いつつ、桐野は中庭を匍匐前進で移動し始めた。




.
< 2 / 5 >

この作品をシェア

pagetop