ダチュラな私。

人を殴ったあとというのは、興奮しているものだと思っていたけれど。

実際にそうしてみると震えはとまり、殴る前より私は冷静になっていた。


もちろん拳は痛かったけれど私は拳の痛みより、足元に転がる男に気を取られていた。

あの男は……私にあれだけの負の感情を植え付けた男は、私の足元で伸びていた。


もちろんそれは一成に殴られていたことや、私に殴られるとは思っていなかった気の緩みなど、原因はたくさんあるのだろうけれど。

足元に転がっているこの男が、私にはとても小さく、弱く見えた。


私はこいつのなにに怯えていたんだろう?

そんな疑問を抱かずにはいられない男の姿を、ドシャ降りの雨の中で見続ける。

だけどその答えは見つからなくて、これ以上、この男を見続ける理由もないので私は後ろを振り返った。


そこには当然、一成と虎がいて。

虎の口は驚いたように半開きになっていて、一成は得意げに笑っていた。
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