ダチュラな私。

二人の姿を冷静になった頭でよく見てみると、私と同じくらいびしょ濡れで、髪も洋服も目茶苦茶になっていた。

虎はジーンズの膝から下が泥まみれだし、Tシャツにもところどころ泥がついている。

一成は服こそあまり汚れていないものの、タンクトップ一枚の上半身は寒そうだし、なにより右手に滲んでいる血が痛々しかった。


二人にはたくさんたくさん“ごめんなさい”や“ありがとう”を伝えなければならない。

だけど今はなんとなく、そんなことを伝えるような雰囲気ではなくて。

私は色々な気持ちを込めて、微笑んだ。


私が微笑んだのを見ると二人は満足そうに頷き、笑ってくれる。

良かった。笑ってくれた。


だけど、そう安堵した瞬間。

極限状態から解放されたからか、私の名前を呼ぶ二人の声を聞いたのを最後に。

私の意識は、そこで途絶えてしまった。
< 280 / 342 >

この作品をシェア

pagetop