【実話】アタシの値段~a period~
結局トレーナーだけを着てリビングに戻ったら
ソファーに座る後姿の隆志は
長風呂だね、と振り返り3秒ほど間を置いて
「飯、作ったよ」
と手招きをした。
ソファーの前にあるガラステーブルの上には
キレイな形のオムライスが2つ並んでいて
テレビに顔を向けたまま
隆志がスプーンを差し出した。
そういえばもう何日も
空腹なんて感覚は忘れていた気がする。
コンビニやファミレスの飽き飽きした食事は
死なないために無理やり胃に押し込んでいるようなものだった。
『女みたいもん作るね』
そう言ってスプーンを受け取り隆志のすぐ隣に座る。
「じゃあ女のユキちゃんはつくれるの?オムライス」
生意気にも笑いながら反撃してきた隆志を
アタシはシカトして
黙々とオムライスを食べた。
手作りの味がするオムライスは
ファミレスで食べる
きっちりと順を追って作られたオムライスの
何倍も美味しかった。