【実話】アタシの値段~a period~
男が適当に選んだ部屋の中。
「なにか飲む?」
『いらない。』
無表情なままのアタシに
ソファに腰掛ける彼は不満そうな表情を浮かべつつ
缶ビールを開けた。
スーツの上からでも分かる腹の出たその男に
触れられるのかと思うと
腕に立った鳥肌が
全身へと広がった。
プシュッと、音を立て閉じ込められていたビールの炭酸が
外へ逃げる。
それさえアタシの耳には不快に響く。
もっとも、閉じ込められたわけでもなく
自分の足でここまでやって来たアタシに
逃げたいなんて気は
更々ない。