【実話】アタシの値段~a period~
『なんで隆志が消すのよ!』
少し怒った振りをしたのは、完全に照れ隠しだった。
だって、嬉しかった。
言葉とは裏腹に、アタシの顔は笑うしか出来なかった。
「やっぱりお前は、笑った方が可愛いよ。」
そう言って笑う隆志。
遠くはない記憶の中、いつも口癖みたいに、そう言ってくれた人の、キラキラの笑顔を思い返した。
だからかもしれない。
少し、重なって見えたのかもしれない、
二度と開くことはないと思っていた、この重い扉が、開きかけたのは。
もう一度、誰かと向合える日が来ればいいなと、少しだけ思えた気がした。
それが隆志ならいいと、どこか片隅で思った。