夜の女に恋をした
「そしてお前携帯に連絡したわけ??」


会社に着き、喫煙室でタバコを吸っていた慎吾に朝の出来事を話して言われた。

そうだった、携帯の存在を忘れていた。


「いや、まだ・・・。」


「っ・・お前テンパりすぎだろ。一回落ち着け!!電話してみろ。」


そう言われ、ポケットから携帯を取り出し、悠嘉の番号にかけた。


『お客様のかけられた番号は現在使われておりません。』


冷たい機械音が耳に響いたのと同時に心臓を鷲掴みにされたくらいのショックを受けた。


俺はゆっくりと携帯を下ろし、赤の終話ボタンを押した。


「つながんねーの??」


繋がらないだけならいいんだよ・・・。


「いや、解約されてる。」


そう言うと慎吾は俺から視線をあからさまに外した。

そして俺と逆の斜め下を見つめ、次の言葉に困っているような感じだった。


「いいよ、気つかわなくても。しょうがねーし。」


すると慎吾は立ち上がり、出口側にいた俺の肩をポンと叩き


「元気出せよ。俺がいい女紹介してやっから!!!」


そう言って喫煙室を出て行った。



慎吾が出て数秒目の前にある大きな銀色の灰皿を見つめていたが、何かが切れたかのように手に持っていたマルボロのタバコを下に投げつけた。



八つ当たりだが、身体が勝手に動いた。
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