桜の下で ~幕末純愛~
桜夜が戻ると明美は桜夜の手を引きながら屯所の外へ出ようとした。

「ちょっ、ちょっと待って下さい。外へは出れません」

桜夜はその手を振りほどく。

「なぜ?一人じゃなければいいんでしょ?」

前科者なもんで…。小舅か舅の許可が必要…何て言えないか。

「二人なんだから平気よ。それとも沖田さんでも呼ぶ?」

呼べねぇっ。ってか何でこんなに強引なワケ?

「どこに何しにいくか教えて下さい」

桜夜の口調が少し厳しくなる。

明美は怯みもせずに笑うと桜夜の腕を掴み、無理矢理屯所をでた。

「ちょっと!放してってば」

何で振りほどけないの?力、強すぎなんだけど。

屯所が見えなくなったところで明美が手を放した。

「何なんですか?」

すると見るからに不逞浪士という風貌の男が二人、近づいてくる。

ヤ…ヤバイ。

背中の傷が疼く気がして冷や汗が出る。

二人の男は桜夜と明美の前で止まると、明美に言った。

「この女か?ご苦労だったな、綾」

綾?明美さんに綾って言った?

どういう事?

呆然としている桜夜に向かい【綾】がクスリと笑う。

「言ったでしょう?愛を知った剣士は弱くなるって」

そう言って桜夜の鳩尾を殴った。

嘘…総司…。

桜夜の意識はそこで途切れた。

一方、山崎は山の中に居た。

―こんな山中にあったんか。報告に戻らな―

山崎が屯所へ戻ろうとすると人の気配がした。

音を立てずに身を隠す。

―気配は三つ…―

山崎が気配の先を確認すると、男に抱えられている女が見える。

―桜夜!?それとあれは明美や―

抱えられているのが桜夜だと分かるのに時間はかからなかった。

―明美が綾っちゅう事か―

桜夜を抱えた男に続いて歩く綾をみて呟く。

―桜夜を助けな…あかん、一人では気ぃ失のうてる桜夜を抱えては逃げきれへん―

山崎は屯所への道を急いだ。
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