桜の下で ~幕末純愛~
桜夜が部屋に戻ると既に宴会が始まっていた。

はやっ。つーかこの部屋なんだ…。

永倉・原田・藤堂が既に呑んでいた。

総司は…あは、呆れ顔だ。

おつまみね、持ってくるか…。

桜夜は台所へ後戻りする。

丁度土方の部屋の前を通ると、灯が消され土方が出てきた。

「土方さん」

桜夜が声をかける。

「チッ」

え?舌打ち?したよね、今確実に!

土方は桜夜を無視して立ち去ろうとする。

「ひ~じ~か~た~さ~ん」

桜夜はつい土方の腕を掴んだ。

「んだよ。暇じゃねぇんだよ」

「シカトすんなよ」

ポソッと桜夜がつぶやく。

「あ゛?誰に向かって言ってやがる」

「土方さんにっ。無視するからですよっ」

土方はあからさまに嫌そうな顔を向ける。

「呑んでんだろ。早く戻れよ」

「土方さんは?」

「島原」

―おめぇらを見てられっかよ―

そう言い桜夜を見ずに行ってしまった。

あ、そうっすか。行ってらっしゃいませ。

土方の気も知らず、桜夜は呑気に台所へ向かい、つまみを持って部屋へ戻った。

部屋では藤堂が既に酔い始めていた。

平助くん、ペース早くない?

最近は新八さんや左之さんとも一緒に居ない時もあるし…。

桜夜は藤堂からお酒を奪うと声をかける。

「早すぎだよ。お水、持ってこようか?」

すると藤堂が桜夜に抱きついた。

藤堂にいきなり抱きつかれ、桜夜はよろけてそのまま尻餅をつく。

その体勢に藤堂以外、全員が固まった。

…膝枕ってやつ…だね、これ。

桜夜はチラッと沖田を見る。

ピクピクと眉が微かに動いているのが分かった。

「へ、平助くん?ちょっとっ」

「桜夜ちゃん。俺にしときなよぉ。あの時、何で俺にしとかなかったんだぁ?」

あの時?ああ…。しかし悪酔いだね、こりゃ。

「そ、それは…ね。えっと…。また今度捨てられたら…ね」

「「また捨てられたら?」」

桜夜の返事に永倉と原田が目を見開く。

沖田はバツの悪そうな顔をしていた。

あ…ヤバ…。

すると沖田が藤堂をつまみ上げ、原田に投げ出し、桜夜の持ってきたつまみを永倉に渡す。

「後は各々で呑んで下さい」

そう言って三人を追い出した。
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