俺が大人になった冬

日の出は、家から目と鼻の先にある多摩川の土手まで行って見た。３年近くここに住んでいるけれど、この場所で日の出を見るのははじめてだ。

「お～！　すげぇ～！」

薄暗い紫がかった空に、ゆっくりと太陽が顔を出し始める。

下の方からぼんやりオレンジ色が現れ、日が昇るにつれてオレンジの帯が段々と広がり、空に美しいグラデーションを作る。朝陽が土手の木々などをシルエットのように映し出し、それはとても幻想的な風景だった。

初日の出を見た感動で皆テンションが高くなり

「もっといい女見つけるぞ～！」
と、内藤が近所のことなどお構いなしで、登り始めた太陽に向かい早々に雄叫びをあげる。

「俺は車買うぞ～！」

「今年こそ香織と一緒に暮らす！」

続いて浩二、日高が叫ぶ。

すると隣にいた谷が

「ゲンはなにを願う？」

と、聞いてきた。