俺が大人になった冬
「願いごとか……」

俺はポツリと呟くと、ふっと頭に浮かんだおそらく「今一番望んでいること」を勢いに任せて叫んでみた。

「『男』になりてぇ~!」

俺的には相当真剣に言ったつもりだった。しかし何故か皆に爆笑された。

「なんだよ、それ!?」

「お前とっくに『男』じゃん!」

「そういう意味じゃなくてさ。『男』に見られてぇつーか……」

「深いな」

「いや、そのまんまだろ? なんだよ、ゲン。好きな女に男として見られてねぇの?」

皆に一斉に突っ込まれる中、ヒサが

「マジなんだな」

と、ホッとしたような、嬉しいような表情でポツリと言った。

人妻にばかり手を出して遊びでしか女と付き合うことをしない俺の行動を、ヒサは口に出さなかったけれど、ずっと心配してくれていたのだろう。

「おう!」

ヒサの肩を『ありがとう』のかわりにポンと叩き、力強い声で俺は答えた。
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