俺が大人になった冬
「もしもし?」

「あけましておめでとう」

電話の彼女の声は、いつものように穏やかだ。

旦那は近くにいないのだろうか? 隠れて電話をしている感じの声ではない。

「おめでとう。って! こんな時間に電話してて平気かよ!?」

言いながら土手に腰を下ろす。

「大丈夫よ。あ、もしかして、寝ていた?」

「起きてたけどさ……」

「今、窓の外を見ていたら日の出があまりに綺麗だったから。見ているかなと思って」

子供のように無邪気な声。

彼女が俺と同じことを考えていたなんて……なんだか嬉しくなって、口元がゆるんでしまう。

「俺も見てたよ。見ながら、あんたのこと考えてた」

「私?」

つい口から出てしまった素直な言葉。

聞き返されて急に恥ずかしくなり、咳払いに紛れて小さい声で「うん」と返事をした。
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