俺が大人になった冬
「なぁ。今度いつ会える?」

「ごめんなさい。まだはっきりとは」

「そっか……」

思わず溜め息が漏れる。

一瞬の沈黙。

「あ! じゃあ、また電話待ってるから」

俺は気を取り直すように、明るい声でそう言った。せっかく電話をくれたのに、暗い空気のまま電話を切るのが嫌だった。

「はい」

彼女の優しい返事が耳に響く。俺の大好きな、穏やかな言い方だ。彼女の返事は心が温かくなる。

俺達はそのまま、お互いに「それじゃあ」と言い合って電話を切った。

待ち受け画面に戻ったことを確認してから、ケータイを閉じる。

閉じたケータイを見つめ、新年早々彼女の声が聞けた喜びを改めて噛みしめるように、それをグッと握りしめた。

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