俺が大人になった冬
「手?」

彼女は不思議そうな顔をしながら、俺の手の上に左手を乗せる。

俺はその手を握って手のひらを上に向けてみた。案の定、彼女の手は重い荷物を持っていたせいで真っ赤だ。

「ったく! こんな重いもん持ってんならマジで電話しろよ! 手ぇ、真っ赤じゃん!」

頼ってもらえなかったことを少し悲しく感じて、つい乱暴な言い方になってしまう。

「え? あ、ごめんなさい」

彼女は何故俺が怒っているのか分かっていないようで、キョトンとした顔をしていた。

「だ、だから!」

「元くんの手、温かいわね」

引っ込みが付かなくなった俺の言葉に被せるように、彼女はそう言って幸せそうな笑顔を見せる。

彼女のそんな笑顔を見たら、一人で怒っていることが急に馬鹿らしくなった。

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