俺が大人になった冬
「病院どこなの?」

女の質問に、疑われたのかもしれないと思いながら、俺は咄嗟に

「あ、そこの広尾の……」

と、近くにある病院を口にした。すると女は疑っているどころか、見ず知らずの俺の言うことを真に受けて

「それなら私の車すぐ近くに停めてあるから、病院まで乗って行けばいいわ。急いで車取ってくるから、向こう側で待っていて」

と、真剣に心配そうな表情を浮かべ、俺に道の反対側で待つように指示すると、小走りで坂を上がっていった。

ふ~ん。この女……結構いい奴じゃん。

道路を横断し、ガードレールにもたれて待つこと数分。いきなり品川ナンバーの真っ赤なBMWのクーペが俺の目の前でハザードランプを点滅させて止まった。

「早く乗って!」

助手席側の窓を開け、先ほどの女が俺を呼ぶ。

「はい」

ただ電話番号をゲットしたかっただけだと言えるわけもなく、話の流れ上仕方なく病院に行くことになってしまったが、車に乗せてもらえたのはツイている。

車の感じから見て、最小限『手を出すと命に関わる』類の女ではない。ということは分かる。

この女の人の良さから言っても、元々育ちがいい女なのだろう。

親切にしてもらっておきながら、俺はこのとき女に対して「いいターゲットを見つけた」と、それくらいにしか思っていなかった。



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