俺が大人になった冬



次の日の午前中、俺は早速昨日の女に電話をかけた。

知らない番号からかかってきて用心しているのか、なかなか電話に出ようとしない。

留守番電話に切り替わったので仕方なく、

「あの……昨日表参道で電話をお借りした者です。また後でもう一度電話させてもらいます」

と、メッセージを残した。

すると、電話を切ってから間もなく女から折り返し電話がかかってきた。

「もしもし。先ほどお電話を頂いたのに、出なくてごめんなさい」

やはりこの女の話し方は、とても上品で柔らかい。

「いえ。知らない番号だと、心配ですよね」

「なにかありました? 忘れ物とか?」

「あ、いえ。昨日あなたに病院まで送ってもらったお陰で、じいちゃんの意識がなくなる前に会えてたので、お礼をと思って」

「おじいさま、お亡くなりに?」

「とりあえずは大丈夫です。でも、薬で眠らせてしまったから……」

我ながら、よくもまあこんなにスムーズに嘘が口から出てくるものだと感心してしまう。

「そう」
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