俺が大人になった冬
「え?」

思いがけない櫻井の態度に、一瞬拍子抜けした。しかし

「私そういうの慣れてるからさ」

と、言われてドキッとした。

「慣れてるって……」

「ああやってこられると断れないんだ、私。それが遊びだって分かっていても、嬉しくなっちゃうの。だって男の人の肌って温かいじゃない?」

悪びれる様子もなく、笑いながら櫻井は続ける。

なんだか少し前の自分と似ている気がした。

櫻井も俺と同じ、体を求められることでしか自分の価値を確認できない『寂しい』人間なのかもしれない……

「櫻井、ごめん。昨日俺、すげぇ辛いことあって」

「だから、そういうのいいから」

櫻井にも気付いて欲しい。そんなふうに体を重ねたって虚しいだけだということ。
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