俺が大人になった冬
「あのさ……避妊はしたつもりだけど、もしものことがあったら俺にちゃんと言えよ」

「え?」

「あんなふうにヤラしてもらっといて、こんなこと言うのはおかしいけど……櫻井、もっと自分を大事にした方がいい」

「なに言ってんの? 向井くん」

確かに、俺の言葉はなんの説得力もない。

それでも、彼女みたいに体を傷つけたり、心を傷つけたりして後悔させたくないから……

「やっぱ、傷つくのは女の方だから……心も、体も……」

俺の言葉を笑って聞いていた櫻井の表情が、急に真剣な物に変わり

「……馬鹿みたい。散々しておいて、今更そんなこと言わないで」

怒りなのか少し声を震わせ、ポツリとそう言った。


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