俺が大人になった冬
「やってみたかったのに……海で一緒にお弁当を食べるって」

「また来ればいいじゃん! それより、なに作ってきてくれたの? 見せて!」

俺たちは車に乗り込み弁当を広げた。

「うまそ~!」

「お口に合うか分からないけど」

女が作ってきた弁当は、金持ちだからといっても、もの凄い物が入っているわけではなく、フライドチキンや卵焼き、エビフライ、おにぎりやサンドイッチと、ごくごく普通の、昔俺が大好きだったような物ばかりが入っていた。

しかし……

「ずいぶんかわいい弁当だね!?」

気合いを入れて作ったのか、ソーセージがタコ型だったり、卵焼きは花の形。うずらの卵がひよこを模していたり、おにぎりは子供向けキャラクターの顔だったり。

なんだかメチャメチャガキ扱いされているようで、内心嫌だったが、そんな素振りも見せず『嬉しい』という表情を作った。
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