一期一会

今日は､午後から夏紀と映画に行く約束をしていた。


あいにくの雨だったけどこんな機会は滅多にないから、すごく楽しみだった。


お小遣いを貯めて買った新しい服を着て準備を急いでいると、父に昼食の弁当を買ってくるよう言われた。


祖母や夕奈にフると余計厄介な事になるとわかっている。
従うしかない。



映画の時間や､待ち合わせ場所で待っているだろう夏紀のことを考えると､気持ちが重くなった。




走って帰ってきたせいで弁当のおかずの汁がご飯に染みてしまった事が原因で、この地獄は始まった。



弁当を渡して、玄関で靴を履き直し、さぁ出ようという時だった。



『こんな汚ねぇメシ食えるかっ!!』


背後でその怒鳴り声を耳にし、今日はもう出掛けられないと悟った。



靴をはくのをやめて振り返った途端、何かがあたしの服に投げ付けられた。



『てめぇ、ふざけんなよ!!』




…たった今、手渡したばかりの弁当の中身が、あたしの服を汚していた。


ハンバーグや付け合わせのキャベツがそこら中に散らばっている。